今回は「なぜ今、COBOLエンジニアが必要なのか」という、ちょっと意外に思われるかもしれないテーマでお話ししたいと思います。
「COBOL」と聞くと、多くの若い世代の方は「古い言語」「過去の遺物」といったイメージを抱くかもしれません。確かに、1959年に開発されたこの言語は、コンピュータの歴史の中では大先輩にあたります。しかし、その“古さ”こそが、現代社会においてCOBOLエンジニアが不可欠な存在である理由なのです。
社会を支えるCOBOLの現役システム
実は、私たちが日々の生活で当たり前のように利用しているサービスの裏側には、今もCOBOLで書かれたシステムが数多く稼働しています。金融機関の勘定系システム、航空会社の予約システム、物流会社の在庫管理システム、官公庁の行政システムなど、社会の基幹をなすインフラの多くが、COBOLをコアとして動いています。
なぜ、これらのシステムは新しい言語に置き換えられないのでしょうか?それは、安定性と堅牢性、そして莫大な開発コストが主な理由です。COBOLは、大量のデータを高速かつ正確に処理することに特化しており、長年の運用でその信頼性は実証済みです。新しいシステムに移行するには、これまでの膨大なロジックを再構築する必要があり、そのコストとリスクは計り知れません。
つまり、COBOLで動いているシステムは、社会の血液とも言える存在なのです。そして、その血液を円滑に循環させるためには、COBOLという言語を深く理解し、システムの保守・運用を担えるエンジニアが絶対に必要となります。
迫り来る「2025年の崖」とCOBOLエンジニアの枯渇
経済産業省が提唱した「2025年の崖」という言葉をご存知でしょうか。これは、多くの企業が抱えるITシステムの老朽化問題と、それに伴う経済損失のリスクを指摘したものです。老朽化したシステムは、複雑化・ブラックボックス化が進み、維持管理が困難になります。加えて、COBOLを扱えるベテランエンジニアの高齢化が進み、後継者が不足しているのが現状です。
このままでは、システムの保守がままならなくなり、企業の競争力が失われるだけでなく、社会全体が大きなリスクに直面する可能性があります。この危機を回避するためには、COBOLの知識を若い世代に引き継ぎ、レガシーシステムの健全な維持管理を継続していくことが急務なのです。
COBOLエンジニアに求められる新たなスキル
もちろん、COBOLの知識だけがあれば良いというわけではありません。これからのCOBOLエンジニアには、レガシーシステムと最新技術を繋ぐブリッジ役としての役割も期待されています。クラウド移行やDevOpsといった新しい技術要素を学び、COBOLシステムをいかに現代のインフラに適合させるか、あるいはマイクロサービス化するなど、次世代のアーキテクチャを検討する能力が求められます。
レガシーシステムの構造を理解し、業務ロジックを把握した上で、最適なモダナイゼーション戦略を立案・実行できるエンジニアは、これからますます価値を高めていくでしょう。
COBOLの未来
「COBOLは未来がない」と思っていませんか?それは大きな間違いです。COBOLは、未来の社会を支えるための重要な基盤であり、COBOLを理解することは、あらゆるシステム開発の根源的な考え方を学ぶことにも繋がります。
COBOLの文法は、とても分かりやすく、自然言語に近い構成になっています。一度習得すれば、業務ロジックの理解に集中でき、汎用機という巨大なコンピュータの仕組み全体を俯瞰できるようになります。これは、他の言語ではなかなか得られない貴重な経験です。
もし、あなたが「安定したスキルを身につけたい」「社会に貢献できる仕事がしたい」と考えているなら、COBOLエンジニアという道は非常に魅力的です。需要は高まる一方なのに、担い手は少ない。つまり、COBOLエンジニアは、引く手あまたの希少な人材なのです。
レガシーシステムを守り、未来へ繋ぐ。COBOLエンジニアは、社会のインフラを守る縁の下の力持ちであり、同時にイノベーションを推進する変革者でもあるのです。このコラムを読んで、少しでもCOBOLに興味を持っていただけたら、私達にとってこれ以上の喜びはありません。一緒に、未来の社会を支え、より良いシステムを創り上げていきましょう。