日本のITインフラの根幹を支える「COBOLエンジニア」は、今、極めて特殊かつ重要な存在として再評価されています。その中でも、Fさん(65歳)のキャリアは、日本のIT産業の発展そのものを体現しており、現代のデジタル変革(DX)時代においても、価値を持っています。今回はエンジニアとしてのキャリアをまとめました。
40年超の経験が紡ぐ、富士通系メインフレームの「生きた歴史」
Fさんのキャリアは、1980年代の日本のIT黎明期に始まります。キャリアの大部分を一貫して富士通系メインフレームとそのCOBOL開発に捧げてきた事実は、Fさんの最も大きな特徴です。日本の大手金融機関や公共機関の基幹システムを長年支えてきたこの技術基盤の深い知識は、一夜漬けで習得できるものではありません。
Fさんは、富士通独自のOSであるMSPやXSP、そしてオンライン処理の要であるAIMなど、現代のエンジニアには馴染みの薄い、システムの心臓部を制御する技術に精通しています。これは単なる技術的な知識ではなく、その環境で何十年にもわたり発生した障害の事例、その回避策、そして非効率な処理を効率化する知恵の蓄積を意味します。まさに、システムの「生き字引」であり、その存在自体がプロジェクトのリスクヘッジとなっています。
精度と信頼性を極めた「業務スペシャリスト」
COBOLエンジニアの価値は、使用言語の古さではなく、その業務への責任感と正確性にあります。Fさんは特に、COBOLが最も必要とされる金融・会計分野のシステム開発・改修を数多く経験してきました。
銀行の勘定系システムにおける預金や決済処理、企業の会計処理において、計算誤差は絶対に許されません。Fさんは、COBOLの特性である**2進化10進数(パック10進数)**を駆使し、小数点以下の誤差すら発生させないロジックを設計・実装する能力を持っています。この「絶対的な正確性」を追求する姿勢は、長年の経験から培われたものであり、現代のモダンな言語のエンジニアが簡単に真似できる領域ではありません。
さらに、役割はコーディングに留まりません。税制改正や大規模な組織再編といった、難易度の高い大規模システム改修プロジェクトにおいては、要件定義やシステム設計といった上流工程から深く関与し、複雑な業務ルールを正確にシステムに落とし込む役割を担ってきました。これは、COBOLエンジニアであると同時に、業界の業務スペシャリストであることを経歴から物語っております。
課題を乗り越え、未来へ橋を架ける「モダナイザー」
現代のIT業界において、Fさんのようなベテランは、レガシーシステムの高コスト化という課題を解決するための**「鍵」**となります。Fさんが持つ知識は、システムの安定稼働を継続する「守り」の役割だけでなく、未来へ導く「攻め」の役割にも活かされます。
システムの近代化(モダナイゼーション)プロジェクトにおいて、FさんはNetCOBOLを用いたオープン系への移行や、他システムとの連携業務に携わっています。これは、彼が持つメインフレームの深い知識を、WindowsやLinuxといったオープン系環境でも活かせることを意味します。
また、Fさんが最も重要視されるのが、仕様解析力です。設計書が存在しない、あるいは長年の改修で形骸化した「ブラックボックス」状態のCOBOLコードを読み解き、システムの正確な現状仕様(As-Is)を把握する能力は、プロジェクトを成功に導くための生命線です。この作業なくして、新しいシステム(To-Be)への移行は不可能です。
希少な技術とマネジメントを次世代に繋ぐ責任
Fさんの長いキャリアは現場のプレーヤーであると同時に、チームリーダーとして若手を含むチームを指導し、品質管理や開発標準の策定にも貢献してきました。
Fさんが持つ技術と知恵は、まさに**「技術継承」が急務となっている日本のIT業界の未来を左右します。経験してきた膨大な量の障害対応ノウハウやシステム固有の設計思想**を、いかに若手に伝え、教え育てるか。これは、残されたキャリアにおいて、最も重要なミッションの一つかなと思います。
Fさん(65歳)の存在は、COBOLという言語が古いという認識を覆し、**「システムは人なり」**という真理を教えてくれます。専門性と責任感は、今後も日本のITインフラの土台を支え続ける、揺るぎない礎となるでしょう。
こんな人を探している企業様・システム会社様は・・・
お気軽に下記までご相談をいただけますと幸いです。
